鍼灸・東洋医学とは

鍼灸が得意な疾患や来院頻度、
東洋医学と西洋医学の違いについて。

東洋医学について

東洋医学は約2000年前に中国で発祥した考え方で、日本や韓国などの地域で発展してきた医学です。
中国では太く刺激の強い治療を行うのに対し、日本では細く痛みの少ない針を用いて治療したりなど地域特有の気候や風土、食生活などの生活習慣や考え方など、土着に根付いた独自の治療法が形成されてきました。
日本では、薬物療法の漢方医学と鍼や灸による物理療法の鍼灸医学、あん摩・指圧・マッサージなど手を使った徒手療法、これらを合わせて東洋医学と呼んでいます。

東洋医学と西洋医学の違い

西洋医学が「病気を見る」医学である一方、東洋医学は「人を見る」医学と言われています。
西洋医学では、目の症状は眼科、皮膚の症状は皮膚科といったように、臓器や病気などを「部分的」に分けて見て、薬や手術といった方法で治療するのに対し、東洋医学ではそれぞれの臓器が相互に関係し合うと考え、「全体」を見ながら薬物(漢方)や鍼・灸、徒手などを用いて、自然治癒力や自己免疫力を高める事を目的とした医学です。

東洋医学が考える健康とは

東洋医学では、季節や生活環境などの変化に自己治癒力で順応し、身体のバランスに偏りがない状態が健康であると考えているのが特徴です。
我々、鍼灸師は鍼やお灸を使いアンバランスな身体を整え、人間が本来持つ自然な状態に戻します。

鍼灸師にできること

鍼灸師というと、ツボや気など東洋医学しか知らない職業だと思われがちですが、学校で取得する単位の半数以上は、骨格・筋肉など身体の「構造」について学ぶ解剖学や、身体の「機能」について学ぶ生理学はもちろん、様々な病気やリハビリなど西洋医学についての基礎知識を学んでいます。
また、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・ケアマネージャなどと連携する事が多い職業ですので、他の医療従事者とコミュニケーションが取れる様に共通言語を学んでいます。
また、学校を卒業した後でも、積極的に勉強会に参加したり知識と技術のアップデートを常に行っています。

我々鍼灸師は医師の様に診断ができませんが、検査法や問診から大きな病気の疑いがある危険兆候を見極めて速やかに必要な医療機関へ行くことを判断することができるのが特徴です。

保険診療では、診断や治療にかけられる時間は少なく限られてしまいますが、我々鍼灸師はコミュニケーションを取りながら施術に時間をかける為、些細な身体の変化に気づく事ができ、病気の早期発見などに繋がるケースも多々あります。

国家資格ついて

医師の他に厚生労働省・文部科学省が認める国家資格「はり師」「きゅう師」を取得した者が鍼灸治療を行えます。国家試験の受験資格を得るためには、鍼灸学科のある3年以上の養成学校を卒業する必要があります。
鍼灸学校で主に履修する科目は下記の通りです。

  • 解剖学
  • 生理学
  • 医療概論
  • 衛生学・公衆衛生学
  • 関係法規
  • 病理学概論
  • 臨床医学総論
  • 臨床医学各論
  • リハビリテーション医学
  • 東洋医学概論
  • 経絡経穴概論
  • はり理論・きゅう理論東洋医学臨床論


主な就職先と活躍の場

就職先によって患者様の分類や施術内容が大きく変わってきますが、近年では美容や在宅医療の分野が注目されています。
また、乳幼児から高齢者など年齢に関わらず治療ができることや、トップアスリートや不妊治療、妊婦などのマタニティまで高い需要があり、国内に留まらずアメリカを始めヨーロッパの医療関係者からも注目されていたり、医療分野に限らずスポーツや美容の分野にも広がっています。
鍼灸師の主な就職先は下記の通りです。

  • 病院・クリニック・診療所・助産所
  • 在宅医療(訪問)
  • リハビリ施設・介護施設
  • 鍼灸接骨院
  • 鍼灸治療院・女性・美容専門治療院・小児専門治療院
  • 美容鍼灸院・エステサロン
  • フィットネスジム
  • スポーツトレーナー
  • 教育・研究機関

東洋医学の種類

1.漢方

生薬と呼ばれるさまざまな植物の葉や茎、根、鉱物、動物で薬効がある部分など、自然由来の原料を組み合わせた医薬品です。

2.はり(鍼/針)

はりは、経穴(ツボ)や皮膚・筋肉に針を刺し、神経を興奮させたり抑制することで、人間本来が持ち合わせる自然治癒作用を引き出す物理療法です。
皮膚に針先を接触させるだけにとどまるものから、筋肉まで貫くものまであります。
また、刺したのちにすぐ抜いたり、しばらく刺したままにしたり、電気を流したりするものまで様々です。
鍼の形や材質は様々ですが、日本ではステンレス製のディスポーザブル(使い捨て)が主に使われています。

3.きゅう(灸)

乾燥させたよもぎの絨毛(葉の裏の白いフカフカした部分)を精製したものです。
皮膚の上に米粒程度の大きさにしたもぐさに火をつけて燃やす温熱刺激による治療法です。
もぐさに含まれる精油成分のシネオールは鎮痛・鎮静・消毒・殺菌作用があります。
ヨーロッパではハーブの母と呼ばれポピュラーに用いられています。

4.徒手

あん摩・指圧・マッサージなど手を使った徒手療法と呼ばれる手技を用いて全身にあるツボを使って全身の調整を行います。
※当院では基本的に徒手療法は行っておりません。

診療の流れ

カルテを基に辛い症状の原因が何かを明確にする為に、東洋医学独自の診察法を用いて病の位置や進行度合、性質や勢いなどの健康状態を診察していきます。

1.カルテ記入

施術をスムーズに行うため症状や体質などについて事前にカルテを入力します。
当院では患者様の手間を省くために電子カルテを導入しています。

2.診察

問診(カウンセリング):西洋医学同様に症状の経過やご自身の体質などについて患者様とコミュニケーションを取りながら記録します。
脈診:体力の強弱や五臓(内臓の様なもの)の状態を、脈の位置から脈を打つ強さや脈拍などを基に診断します。
腹診:腹部の緊張や冷え、凝りや押さえた時の痛みなどから病んでいる位置や元気の状態などを診断します。
舌診:舌(べろ)の色や形、苔などから、身体の水分代謝や血液の状態、身体の疲労やストレス状態を観察します。

3.施術

これらの診断から総合的に判断し、鍼や灸を使い施術を行います。

4.養生指導

施術後にご自身の身体の状態や治療プランについての説明や、食事や運動など普段の生活で気を付ける点などを指導します。

鍼灸が得意とする症状や疾患

鍼灸の効果が有効とされる疾患群について、世界保健機関(WHO)は以下の通りです。

  • 神経疾患
    神経痛、麻痺、痙攣、自律神経失調、神経症、心身症、脳卒中後遺症、頭暈、肩こり
  • 運動器疾患
    関節炎、関節症、肩関節周囲炎(五十肩)、関節リウマチ、ぎっくり腰、頸筋強直、むち打ち症、捻挫、腱鞘炎、腰痛症、外傷後遺症。
  • 循環器疾患
    心悸亢進、高血圧、低血圧、動脈硬化症、動悸、息切れ。
  • 消化器系
    口内炎舌炎、歯痛、胃腸炎、胃アトニー、胃下垂、胃酸過多、胆石症、肝機能障害、肝炎、十二指腸潰瘍、下痢、便秘、痔疾患。
  • 呼吸器疾患
    風邪、風邪予防、咳嗽、鼻炎、偏桃炎、咽頭炎、気管支炎、気管支喘息。
  • 泌尿器疾患
    ネフローゼ、腎尿路結石、膀胱炎、尿道炎、前立腺肥大、陽萎(インポテンツ)遺精、性機能障害。
  • 内分泌疾患
    尿崩症、バセドウ病、糖尿病、脚気、痛風。
  • 皮膚科疾患
    皮膚炎、蕁麻疹、ヘルペス、おでき等。
  • 産婦人科
    不妊症、月経不順、生理痛、冷え症、更年期障害、妊娠悪阻(つわり)、胎位異常(逆子)、乳腺炎、乳汁分泌不全。
  • 小児科
    小児神経症(疳の虫、夜泣き症など)、小児喘息、虚弱体質。
  • 眼科
    仮性近視、眼精疲労、眼瞼縁炎(ただれ目)、麦粒腫(ものもらい)、結膜炎、弱視。耳鼻咽喉科
    耳鳴、難聴、メニエール病、鼻炎、中耳炎、鼻血、副鼻腔炎。

保険診療について

はりきゅう治療には、医師の同意書があれば保険診療が適応になります。
▼保険適応になる疾患
1.五十肩
2.リウマチ
3.頸腕症候群
4.神経痛
5.腰痛症
6.頸椎捻挫後遺症(むちうち症)

保険適応については事前に当院にご相談ください。
また、はりきゅう治療を受診している期間はその他医療機関(病院・接骨院など)との併用はできません。

未病・予防医学

東洋医学では、いわゆる「未病」と呼ばれる健康と病気の間のグレーゾーンを得意とし、浮腫みやすい・冷えやすい・下痢や便秘しがち・気持ちが落ち着かない・風邪をひきやすいなどの西洋医学では病名がつかなかったり、治療方法がない状態を指します。
このような病気になる一歩手前の未病の状態は、鍼灸治療を受ける事で体質から改善することが期待できますので一度相談されてみてください。
また、この未病を改善していくことで、大きな病気に罹るリスクを未然に防ぐ「予防医学」に繋がります。

鍼灸の効果と通院頻度について

人間の身体には、ホメオスタシスや恒常性と呼ばれる身体を一定の状態に保とうとする機能が備わっています。
症状が軽度や早期の場合は、正常な状態へ戻り易いですが、重度や慢性化している場合はそのアンバランスな状態を維持しようとする力が強く働きます。
鍼灸治療を行うと身体が正常な状態へ戻ろうとしますので、常に正常な状態を維持できるように刺激を与え続けていくことがとても大事です。
もともと、人間には身体のバイオリズム(生体リズム)が存在する為、体調が良い時と優れない時があります。
このバイオリズムの波があることで、身体の状態は良くなりやすいですが、長い間、不調が続くとこのバイオリズムは小さい状態で一定の為、症状に変化がなくなかなか良くなりません。
症状が慢性化している場合は、2歩進んで1歩下がるような経過を経て身体の状態が少しづつ良くなっていくので人間が本来もつ恒常性やバイオリズムがしっかりと定着するまで詰めて通院してもらう必要がありますが、その状態が維持できるようになれば通院頻度は徐々に減らせるようになります。

▼健康な状態の身体のリズム


▼不調な状態が続いた身体のリズム


▼鍼灸治療を継続した場合のリズムの変化
治療直後の状態を保ち、変化を定着する為に、悪い状態に戻り切る前に継続した刺激を身体に入れる事が大切


▼回復までのイメージ

▼慢性化している状態が続くと突然回復する事は少ない