東洋医学・鍼灸ってどんな医学?

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東洋医学について

東洋医学は約2,000年前に中国で発祥した考え方で、日本や韓国などの地域で発展してきた医学です。
近年では、世界中で広く使用されており、特に中国、韓国、台湾などアジア諸国では、一般的な治療方法の一つとして受け入れられています。

東洋医学は、「陰陽五行説」と呼ばれる概念を基に成り立っている伝統医療です。
これは鍼灸治療の基本的な考え方で、これらを身体の機能に応用した「五臓」と呼ばれる5つの臓器の様に別け、身体そのものは「気血水」の三要素で構成されていると考えられています。
これらの「五臓」や「気血水」の失調により不調をきたすと考えられている為、東洋医学ではこれらを調整することで、病気を治療します。

東洋医学には、鍼灸、漢方、アーユルヴェーダ、あん摩など、様々な治療法があります。
中国では太く刺激の強い治療を行うのに対し、日本では細く痛みの少ない鍼を用いて治療したりなど地域特有の気候や風土、食生活などの生活習慣や考え方など、土着に根付いた独自の治療法が形成されてきました。

日本では、薬物療法の漢方医学と鍼や灸による物理療法の鍼灸医学、あん摩・指圧・マッサージなど手を使った徒手療法、これらを合わせて東洋医学と呼んでいます。
東洋医学は、西洋医学とは異なる考え方や治療法を持っているため、西洋医学だけでは治らない病気にも効果を発揮することができます。

東洋医学と西洋医学の違い

「人を見る医学」

東洋医学と西洋医学は、基本的に考え方やアプローチが異なります。

西洋医学が「病気を見る」医学である一方、東洋医学は「人を見る」医学と言われています。
西洋医学では、目の症状は眼科、皮膚の症状は皮膚科といったように、臓器や病気などを「部分的」に分けて見て、生理学や病理学に基づいて、病気を物理的な要因や病理学的な現象として解釈します。
西洋医学は、病気を診断し、薬や手術を使って治療します。西洋医学は、科学的な方法に基づいて病気を研究し、治療することを重視します。

東洋医学ではそれぞれの臓器が相互に関係し合うと考え、「全体」を見ながら薬物(漢方)や鍼・灸、徒手などを用いて、自然治癒力や自己免疫力を高める事を目的とした医学です。
また、東洋医学では、病気を人間のエネルギーやバランスの乱れとして解釈します。
東洋医学は、エネルギーやバランスを調整することで治療を行います。

東洋医学と西洋医学は、それぞれ独自の考え方やアプローチを持っていますが、西洋医学と東洋医学の組み合わせによって、より効果的な治療を行うことができる場合もあります。

東洋医学が考える健康とは

「中庸」という考え

東洋医学では、季節や生活環境などの変化に自己治癒力で順応し、身体のバランスに偏りがない状態が健康であると考えているのが特徴です。

孔子が記した論語には「中庸」と呼ばれる概念が中心になっており、「過不足がなく調和がとれていること」について書かれていますが、「東洋医学が考える健康な状態」の概念においても言い換えることができ、実際の治療でも応用されています。

東洋医学には、人間が健康な状態であることを示す要素として、「気・血・水」という概念があります。
「気」とは生命活動を行うために必要なエネルギーのことを指し、「血」はいわゆる血液のことで、「水」はリンパ液や汗といった血液以外の体液を指します。
この「気・血・水」の3つが、少なかったり、多すぎたりせずに、滞りなく全身を巡っている状況を、東洋医学では健康的な状態であると考えています。

また、東洋医学では「冷え・火照り」の偏りが不調を引き起こすと考えられており、鍼や灸を使ってこれらの偏りや滞りを治療していきます。


未病・予防医学

「大きな病気を未然に防ぐ」

東洋医学では、いわゆる「未病」と呼ばれる健康と病気の間のグレーゾーンを得意とし、浮腫みやすい・冷えやすい・下痢や便秘しがち・気持ちが落ち着かない・風邪をひきやすいなどの西洋医学では病名がつかなかったり、治療方法がない状態を指します。

予防医学は、病気を予防することを目的とした医学のことを指します。予防医学には、2つの要素があります。一つは、疾患の予防をすること、もう一つは、健康を維持することです。
予防医学には、自己健康管理、健康教育、健康促進、疫学調査などがあります。予防医学によって、病気を予防し、健康を維持することができます。
東洋医学では、未病を見つけるために、体質や生活習慣、精神面などを詳しく見て、病気になりそうな状態を早期に発見することが重要です。
このような病気になる一歩手前の未病の状態は、鍼灸治療を受ける事で体質から改善することが期待できますので一度相談されてみてください。

この未病を改善していくことで、大きな病気に罹るリスクを未然に防ぐ「予防医学」に繋がります。

鍼灸師にできること

「統合医療という考え」

鍼灸師というと、ツボや気など東洋医学しか知らない職業だと思われがちですが、学校で取得する単位の半数以上は、骨格・筋肉など身体の「構造」について学ぶ解剖学や、身体の「機能」について学ぶ生理学はもちろん、様々な病気やリハビリなど西洋医学についての基礎知識を学んでいます。
また、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・ケアマネージャなどと連携する事が多い職業ですので、他の医療従事者とコミュニケーションが取れる様に共通言語を学んでいます。
また、学校を卒業した後でも、積極的に勉強会に参加したり知識と技術のアップデートを常に行っています。

西洋医学を中心とした医療や鍼灸・漢方などの伝統医学(東洋医学)、相補・大替医療を適宜合わせながら行うことを「統合医療」と呼ばれています。
我々鍼灸師は医師の様に診断ができませんが、検査法や問診から大きな病気の疑いがある危険兆候を見極めて速やかに必要な医療機関へ行くことを判断することができるのが特徴です。

保険診療では、診断や治療にかけられる時間は少なく限られてしまいますが、我々鍼灸師はコミュニケーションを取りながら施術に時間をかける為、些細な身体の変化に気づく事ができ、病気の早期発見などに繋がるケースも多々あります。

国家資格ついて

医師の他に厚生労働省・文部科学省が認める国家資格「はり師」「きゅう師」を取得した者が鍼灸治療を行えます。国家試験の受験資格を得るためには、鍼灸学科のある3年以上の養成学校を卒業する必要があります。
鍼灸学校で主に履修する科目は下記の通りです。

  • 解剖学
  • 生理学
  • 医療概論
  • 衛生学・公衆衛生学
  • 関係法規
  • 病理学概論
  • 臨床医学総論
  • 臨床医学各論
  • リハビリテーション医学
  • 東洋医学概論
  • 経絡経穴概論
  • はり理論・きゅう理論東洋医学臨床論

主な就職先と活躍の場

就職先によって患者様の分類や施術内容が大きく変わってきますが、近年では美容や在宅医療の分野が注目されています。
また、乳幼児から高齢者など年齢に関わらず治療ができることや、トップアスリートや不妊治療、妊婦などのマタニティまで高い需要があり、国内に留まらずアメリカを始めヨーロッパの医療関係者からも注目されていたり、医療分野に限らずスポーツや美容の分野にも広がっています。
鍼灸師の主な就職先は下記の通りです。

  • 病院・クリニック・診療所・助産所
  • 在宅医療(訪問)
  • リハビリ施設・介護施設
  • 鍼灸接骨院
  • 鍼灸治療院・女性・美容専門治療院・小児専門治療院
  • 美容鍼灸院・エステサロン
  • フィットネスジム
  • スポーツトレーナー
  • 教育・研究機関

東洋医学の種類

漢方

漢方は、中国伝統医学の一部で、約2000年の歴史があります。漢方医学は、自然界にある植物、動物、鉱物などを原料にして、薬剤を作り、病気を治療する方法を提供します。

漢方は、病気を治療するために、身体や精神のバランスを整えることを重視します。そのため、漢方は、身体の状態や病気の種類に応じて、異なる薬剤を使用します。

漢方薬は、主に植物性の成分を含みます。漢方薬は、薬効、副作用、投薬量などについて詳細に規定されており、使用するには専門の資格を持つ医師による指導が必要です。

漢方は、世界中で広く使用されており、特に中国、韓国、台湾などアジア諸国では、一般的な治療方法の一つとして受け入れられています。また、近年では、西洋の医学と組み合わせることで、治療効果を高めることが期待されています。

はり(鍼/針)


鍼は、東洋医学の一部で、鍼を人体に突き刺して、痛みや疾患を治療する方法を提供します。
鍼は、筋肉や結線、組織などに刺激を与えることで、血流を促進し、免疫力を高め、疼痛を軽減することを目的とします。
皮膚に針先を接触させるだけにとどまるものから、筋肉まで貫くものまであります。
また、刺したのちにすぐ抜いたり、しばらく刺したままにしたり、電気を流したりするものまで様々です。
鍼灸は、多くの病気に使用されており、特に筋骨格系の疾患、内臓の疾患、神経系の疾患などに効果があるとされています。
鍼の形や材質は様々ですが、日本ではステンレス製のディスポーザブル(使い捨て)が主に使われています。

きゅう(灸)

乾燥させたよもぎの絨毛(葉の裏の白いフカフカした部分)を精製したものです。
皮膚の上に米粒程度の大きさにしたもぐさに火をつけて燃やす温熱刺激による治療法です。
もぐさに含まれる精油成分のシネオールは鎮痛・鎮静・消毒・殺菌作用があります。
ヨーロッパではハーブの母と呼ばれポピュラーに用いられています。

艾は、色々な化学物質を含んでいます。例えば以下のような成分が含まれています
・ターメロール: 芳香性成分で、鎮痛や抗菌作用があるとされています。
・アルコール: 解熱作用や鎮痛作用があるとされています。
・トーチレート: 抗菌性と抗炎症性があるとされています。
・α-ヒドロキシアゾリン酸: 抗炎症作用があるとされています。
・β-ヒドロキシアゾリン酸: 抗菌作用があるとされています。
・トウモロコシアリン: 抗炎症作用があるとされています。

徒手

あん摩・指圧・マッサージなど手を使った徒手療法と呼ばれる手技を用いて全身にあるツボを使って全身の調整を行います。
筋肉や関節の緊張を解消し、全身のバランスを整えることを目的としています。
身体の問題に対して特に効果的であり、筋肉の緊張や関節の痛み、ストレスや不調、疲れなどを改善することができます。

あん摩」、「指圧」、「マッサージ」は、体を取り扱う治療法のいくつかの種類です。
・あん摩:基本的に身体のボタンを押すような動作を行い、疼痛やストレスなどを緩和することを目的とする治療法です。
・指圧:指を用いて身体の深い部分に圧力を加え、疼痛や不調などを改善することを目的とする治療法です。
・マッサージ:手や指、肘などを用いて、筋肉や結合組織などをなじませ、疼痛や不調などを緩和することを目的とする治療法です。

これらの治療法は、同じ目的を持つものもありますが、方法や技術が異なります。

保険診療について

はりきゅう治療には、医師の同意書があれば保険診療が適応になります。

▼保険適応になる疾患

1.五十肩
2.リウマチ
3.頸腕症候群
4.神経痛
5.腰痛症
6.頸椎捻挫後遺症(むちうち症)

保険適応については事前に当院にご相談ください。
また、はりきゅう治療を受診している期間はその他医療機関(病院・接骨院など)との併用はできません。

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