めまいとは
まいとは、突然の回転感や揺れ感を伴って、周囲がブレるような感覚を指します。
通常、頭部の動きに起因しますが、眼球の動きや耳のバランスセンサーなどの他の原因も考えられます。
めまいには様々な原因があり、中には簡単なものもあれば重篤なものもあります。めまいは、時には短時間だけ発生し、時には長期間続くこともあります。
めまいの種類と原因や治療法について
めまいにはいくつかの種類があります。以下に代表的な種類をいくつか挙げます。
前庭性めまい
内耳の前庭器官に問題があることが原因で、立ち上がったり、動いたりするとめまいを感じることがあります。
加齢や内耳の病気が原因となることが多いです。
【特徴】 前庭性めまいの特徴は、以下の通りです。
- 立ち上がったり、動いたりすると、目の前が回転するようにめまいを感じる。
- 頭を動かすときにめまいを感じる。
- 吐き気や嘔吐、汗をかくなどの自律神経症状が現れることがある。
【原因】 前庭性めまいの原因は、内耳の前庭器官に問題があることが多いです。
内耳は、平衡感覚や空間認識を司る器官であり、この器官に異常が生じるとめまいが引き起こされます。
内耳の異常は、加齢、内耳疾患、外傷、ストレスなどが原因となることがあります。
【治療法】 前庭性めまいの治療法は、原因によって異なります。以下は一般的な治療法の例です。
- 薬物療法:めまいの症状を和らげるための薬物治療が行われることがあります。
- 鍼灸療法:前庭神経や自律神経を調整することで、めまいの症状を緩和することができます。
- リハビリテーション:めまいによる身体の不安定感を改善するためのトレーニングが行われることがあります。
中枢性めまい
中枢性めまいは、脳や神経系の異常が原因で起こるめまいの一種です。
内耳に問題がなくてもめまいが起こることがあります。
【特徴】 中枢性めまいの特徴は、以下の通りです。
- 目の前が回転する、揺れる、傾くなどのめまいを感じる。
- 立ち上がったり、動いたりするとめまいが強くなる。
- 吐き気や嘔吐、耳鳴り、頭痛などの症状が現れることがある。
- 意識障害や失語などの神経症状が生じる場合もある。
【原因】 中枢性めまいの原因は、脳や神経系に異常が生じることが多いです。以下は代表的な原因の例です。
- 脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などの脳疾患。
- 脳幹や小脳などの神経疾患。
- 薬物やアルコールの乱用による脳の障害。
- ストレスや過労による神経系の疲れ。
【治療法】 中枢性めまいの治療法は、原因によって異なります。
以下は一般的な治療法の例です。
- 原因に対する治療:脳や神経系の疾患を治療することで、めまいの症状を緩和することができます。
- 薬物療法:めまいの症状を和らげるための薬物治療が行われることがあります。
- リハビリテーション:めまいによる身体の不安定感を改善するためのトレーニングが行われることがあります。
後天性めまい
後天性めまいとは、後天的に発症するめまいのことを指します。
主に内耳や前庭神経に何らかの異常が生じることによって起こります。
【特徴】 後天性めまいの特徴は、以下の通りです。
- 突然めまいを感じることが多く、起き上がったり、動いたりすると症状が強くなる。
- 目がくらむ、ふらつく、ふわふわする、吐き気や嘔吐などの症状が現れることがある。
- 睡眠不足やストレスなどの状況下で悪化することがある。
【原因】 後天性めまいの原因は、内耳や前庭神経の病気や障害などが原因となることが多いです。
以下は代表的な原因の例です。
- 内耳炎やメニエール病、前庭神経炎などの内耳疾患。
- 頚椎症や脊髄病変、脳卒中などの神経系の疾患。
- 薬物やアルコールの乱用による中枢神経系の障害。
- ストレスや過労、睡眠不足などの身体的、心理的な要因。
【治療法】 後天性めまいの治療法は、原因によって異なります。以下は一般的な治療法の例です。
- 原因に対する治療:内耳疾患や神経疾患を治療することで、めまいの症状を緩和することができます。
- 薬物療法:めまいの症状を和らげるための薬物治療が行われることがあります。
- 物理療法:内耳に対するマッサージや体位変換などの物理療法が行われることがあります。
- リハビリテーション:めまいによる身体の不安定感を改善するためのトレーニングが行われることがあります。
眼精疲労によるめまい
パソコンやスマートフォンなど、長時間目を酷使することにより、目の疲れが原因でめまいを感じることがあります。
頭痛や目の疲れ、吐き気などの症状が伴うことがあります。
【特徴】 眼精疲労によるめまいの特徴は、以下の通りです。
- 目の疲れや重だるさを感じることが多く、眼球や眼筋の疲労感がある。
- ふらつき、めまい、立ちくらみ、吐き気などの症状がある。
- 目が乾燥し、かすみ目や充血が起こることがある。
- 頭痛や肩こり、首のこりなどが伴うことがある。
【予防法】 眼精疲労によるめまいを予防するためには、以下のような対策が有効です。
- デジタルデバイスを使用する時間を制限する。
- デバイスの画面を明るくする。
- 画面の視認性を高めるために、フォントや文字サイズを調整する。
- 画面を見る時間を20分程度に区切り、5分程度休憩を挟む。
- 瞑想やストレッチ、ウォーキングなどの運動を行い、身体をリラックスさせる。
- 目の周りの筋肉をほぐすマッサージを行う。
- 目薬を使用して、目の乾燥を防ぐ。
【治療法】 眼精疲労によるめまいの治療法は、以下のような方法があります。
- 目の負担を軽減するための眼科的治療。
- 目の周りの筋肉をほぐすマッサージやストレッチ、運動などの理学療法。
- 薬物療法:めまいや頭痛を和らげるための薬物治療が行われることがあります。
こんなめまいには要注意!
めまいには多くの種類があり、その原因によって症状や危険度が異なりますが、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などの脳疾患などの疑いがある危険な兆候をいくつか挙げます。
- 突然の激しいめまい
- 頭痛や吐き気、嘔吐、視力の変化などの症状が伴うめまい
- 聴力の低下や耳鳴りとともにめまいが続く
- 落ち着かないめまいが続く
- 意識障害や意識喪失を起こす
上記のような症状が現れた場合には、すぐに医師の診察を受けることが重要です。これらの症状は、重大な病気や疾患の兆候として現れる可能性があるため、放置せず早期に治療を受けることが大切です。また、めまいが原因で転倒やけがをしてしまう可能性があるため、注意が必要です。
鍼灸で効果があるめまいとセルフケア
鍼灸の効果が期待でききるめまいの種類は、前庭性めまいや良性発作性頭位めまい症(BPPV)などの末梢性めまいに対して効果的です。
鍼灸は、前庭器官やその周辺の筋肉や神経の働きを調整することで、めまいやその他の症状の改善に役立つことがあります。
鍼灸治療は、薬を使わずに身体の自然治癒力を高める方法であるため、副作用がほとんどありません。薬によってめまいの症状を改善する場合には、眠気や吐き気、めまいの悪化などの副作用が出ることがありますが、鍼灸治療によってそれらの副作用を回避することができます。
前庭のめまいには、以下のような種類があります。
メニエール病
メニエール病は、内耳の前庭器官や蝸牛に異常があることで起こる病気であり、めまい、耳鳴り、聴力低下、耳閉感などの症状が現れます。
鍼灸による治療が有効である理由は、以下のような点が挙げられます。
- 血流改善
鍼灸は、特定の経穴を刺激することで、血流を改善する効果があります。内耳に血液が十分に行き届かないことが、メニエール病の原因となることがあるため、鍼灸による血流改善は症状の改善につながるとされています。 - 自律神経調整
鍼灸は、自律神経の調整にも効果があります。メニエール病は、自律神経のバランスが崩れて起こることがあるため、鍼灸による自律神経調整が症状の改善につながるとされています。 - ストレス緩和
ストレスがメニエール病の発症や悪化に関与することがあるため、ストレスを軽減することも重要です。鍼灸は、リラックス効果があるため、ストレス緩和にも効果があります。
以下に、メニエール病に対するセルフケアの一例を紹介します。
- 食事の見直し
メニエール病患者は、塩分の摂取量を制限することが推奨されています。また、カフェインやアルコール、砂糖の摂取も控えるようにしましょう。偏った食生活を改善することも大切です。 - ストレスの軽減
ストレスはメニエール病の発作を引き起こすことがあります。リラックスするために、瞑想や深呼吸、ストレッチなどの方法を試してみましょう。 - 運動
適度な運動は、メニエール病の症状を改善することが知られています。ウォーキングや水泳など、身体に負担のかからない運動を行いましょう。 - 薬の服用
医師から処方された薬を適切に服用することも大切です。また、自己判断での薬の増減や中止は避けましょう。 - 安静にする
めまいやふらつきが起こった場合は、安静にすることが大切です。横になったり、目を閉じたりして、身体を休めましょう。
これらのセルフケアを遵守することで、メニエール病の症状を軽減することができるかもしれません。ただし、症状が悪化した場合は、必ず医師の診断を受けるようにしてください。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、内耳の前庭器官に石灰化した粒子がたまり、頭の位置や動きによってめまいが起こる病気です。
鍼灸がBPPVに効果的な理由は、以下のようなものが考えられます。
まず、BPPVの治療には、頭位制限や回転体操などの特殊な体操が用いられますが、これらの体操は頭部の位置変化によってめまいを引き起こすことがあります。
一方で、鍼灸は、痛みのない非侵襲的な治療法であり、患者さんが楽な姿勢で治療を受けることができるため、頭位制限や回転体操が困難な患者さんにとって有用であると考えられます。
また、鍼灸治療は、血流や神経の働きを促進することが知られています。
BPPVでは、内耳の前庭器官にたまった粒子が正常な位置に戻るのを促すために、内耳内の血流や神経の働きが重要な役割を果たします。
そのため、鍼灸が内耳の機能改善に効果的であると考えられています。
良性発作性頭位めまい症のセルフケアには以下のようなものがあります。
- Epley Maneuver(エプリー法)
特定の体位で頭を回転させることで症状を軽減する方法です。
自分でできる方法もありますが、正しい方法を知るためには医師や理学療法士の指導を受けることが必要です。 - Semont Maneuver(セモン法)
Epley法と同様に特定の体位で頭を回転させることで症状を軽減する方法です。
こちらも正しい方法を知るためには医師や理学療法士の指導を受けることが必要です。 - Brandt-Daroff Exercise(ブラント・ダロフ法)
特定の体位で起き上がったり、座ったりすることで症状を軽減する方法です。
自宅でできるセルフケア法の一つです。 - 食事や生活習慣の改善
塩分やカフェイン、アルコールなどを控えめにし、規則正しい生活習慣を心がけることで症状の改善が期待できます。 - ストレスの軽減
ストレスは症状を悪化させる原因となるため、ストレスを減らすためのリラックス方法を取り入れることが大切です。
なお、症状が軽度であれば自己治癒することがありますが、症状が重度であったり、再発する場合には医師の診断と治療が必要です。
前庭神経炎
前庭神経炎は、前庭神経が感染や炎症によって障害を受け、めまいや平衡障害を引き起こす病気です。前庭神経炎に対する鍼灸治療が有効であるとされる理由は、以下のようなものが考えられます。
まず、鍼灸治療は、神経の働きを調整する効果があります。
前庭神経炎では、前庭神経が障害を受けて、めまいや平衡障害を引き起こしますが、鍼灸治療によって、神経の働きを正常化することができるとされています。
また、鍼灸治療は、血流を促進する効果があります。前庭神経炎では、神経に十分な栄養や酸素が行き届かなくなることがあるため、血流を促進することで、神経の回復を促すことができます。
さらに、鍼灸治療は、免疫力を高める効果もあります。前庭神経炎は、感染や炎症によって引き起こされることが多いため、免疫力を高めることで、病気に対する抵抗力を高めることができます。
以下は、前庭神経炎のセルフケアに役立ついくつかのヒントです。
- 安静に休む
前庭神経炎の発作中は、身体を安静に保ち、寝転がることが大切です。過度な運動や体の動きがめまいを悪化させることがあるため、注意が必要です。 - 涼しくて暗い部屋を作る
めまいの発作中は、明るい場所や暑い場所は避け、涼しくて暗い部屋で過ごすことが効果的です。冷却シートを頭に貼ることも考えられます。 - 水分補給
めまいや吐き気を引き起こす前庭神経炎の症状は、脱水症状を引き起こすことがあります。水分をこまめに補給することが大切です。 - 適度な食事
前庭神経炎の発作中は、食欲が低下することがありますが、適度な食事を摂ることが大切です。高脂肪や高カロリーの食事は避け、消化の良い、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。 - ストレスを避ける
ストレスは前庭神経炎の症状を悪化させることがあります。ストレスを軽減するために、リラックスした音楽を聴いたり、深呼吸をすることが効果的です。
前庭線維通路症候群
前庭線維通路症候群(ベルニュー病)は、前庭器官に異常が起こり、めまい、吐き気、耳鳴りなどの症状を引き起こす疾患です。
鍼灸がこの疾患に対して有効であるとする研究や報告がいくつかあります。
一般的に、鍼灸は神経系や血管系、筋肉やリンパ管などの身体の機能を調整することができるとされています。
前庭器官は平衡感覚を担っており、鍼灸が身体の機能を調整することで、前庭器官の異常を改善することができる可能性があります。
また、鍼灸は痛みやストレスの緩和にも効果があります。
前庭線維通路症候群には、めまいや耳鳴りなどの症状があり、これらの症状が引き起こすストレスや不安感を軽減することで、症状の改善につながる可能性があります。
以下に、前庭線維通路症候群に対するセルフケアのポイントをいくつか紹介します。
- 安静にする
めまいの症状が出ているときは、できるだけ安静にして身体を安定させるようにしましょう。
寝ているときは頭を高くして寝ると良いです。 - 食事に気を付ける
胃腸にも影響があるため、食事に気を付けることが大切です。
脂っこいものやアルコール、刺激の強いものなどを避け、消化の良い食品を摂るように心がけましょう。 - ストレスを減らす
ストレスは症状の悪化につながることがあります。
ストレスを感じたときには、リラックスするための方法を取り入れるようにしましょう。
ウォーキングやストレッチ、深呼吸などが効果的です。 - 運動をする
運動は身体を健康に保つために大切です。
ただし、激しい運動やバランスを必要とする運動は、めまいの症状がある場合は避けるようにしましょう。
めまいに対する鍼灸治療は身体のどんな場所に鍼を打つの?
鍼灸治療において、めまいの原因によって異なりますが、一般的には以下のような部位に鍼を刺すことがあります。
- 頭部
頭皮、額、こめかみなどの部位に鍼を刺すことがあります。
これによって、血流の改善や緊張の緩和、神経系の調整が行われます。 - 背中
背骨や肩甲骨周辺などの部位に鍼を刺すことがあります。
これによって、自律神経のバランスを整えたり、筋肉の緊張を緩めたりすることで、めまいの症状を軽減することができます。 - 手足
手の指先や足のつま先、足首などの部位に鍼を刺すことがあります。
これによって、身体の末梢部に刺激を与えることで、血流の改善や神経系の調整が行われます。
鍼灸治療は、めまいの原因や症状に合わせて、個別に施術内容が決まります。専門の鍼灸師に相談して、適切な施術を受けることが大切です。
めまいの鍼灸治療に関する論文や研究結果
以下に、めまいの鍼灸治療に関する代表的な論文や研究を紹介します。
- “Acupuncture for vertigo: a systematic review” (2015)
このシステマティックレビューは、めまいに対する鍼灸治療の効果を調査しました。9件のランダム化比較試験が含まれ、その結果、鍼灸治療がめまいの緩和に対して有効であることが示されました。
- “Acupuncture for the treatment of vertigo: a systematic review” (2017)
このシステマティックレビューは、鍼灸治療がめまいに対して有効であるかどうかを調査しました。12件のランダム化比較試験が含まれ、その結果、鍼灸治療がめまいの緩和に対して有効であることが示されました。
- “Clinical efficacy observation on acupuncture therapy for treating vertigo” (2021)
このランダム化比較試験は、鍼灸治療がめまいに対して有効であるかどうかを調査しました。結果、鍼灸治療がめまいの緩和に対して有効であることが示されました。
これらの研究は、鍼灸治療がめまいの緩和に対して有効であることを示しています。