子宮内膜症とは、子宮内膜もしくはそれに似た組織が本来あるべき子宮内側以外の場所に発生し増殖する疾患です。月経のある女性の10人に1人が発症すると言われていて、特に20〜30歳代の女性で発症が多いと報告されています。
子宮の構造と子宮内膜について
子宮の役割は、妊娠をした時に胎児を育てる場所です。そのため子宮は伸縮自在の袋状の臓器になっています。
子宮は大きく分けて、「子宮平滑筋」という筋組織と「子宮内膜」の2つの組織で構成されています。子宮平滑筋は、月経の時に経血を体外に排出するためや、出産時に子宮を収縮させたりするのに働きます。
一方、子宮内膜ですがその名称の字のごとく、子宮の内側にできる膜です。
子宮の内側に膜を形成し、その内膜で受精卵を直接包み込んで胎児と胎盤に育っていくのを支えていきます。本来、子宮の内側にできるはずの内膜が何らかの原因で子宮内側でない場所で発生してしまうのが子宮内膜症です。
子宮内膜症が発生しやすい場所として、卵巣・ダグラス窩・仙骨子宮靭帯・卵管・膀胱子宮窩などがあります。
(参照:https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=9)
子宮内膜症の原因
子宮内膜症の原因は、正直なところ現在の研究では明確にはされていません。
ただ、いくつかの説がありますが月経血が逆流することが関与していると考えられています。
月経血の大部分が膣を通って体外に排出されます。しかし、一部は卵管を通って腹腔(骨盤内)に逆流します。月経血中の子宮内膜組織や細胞も一緒に運ばれ、骨盤内の臓器や組織に付着して育つことで子宮内膜症になるのではと言われています。
子宮内膜症の症状
子宮内膜症の90%の方が感じる症状としては月経痛が代表的です。それ以外にも腰痛、下腹部痛、性交痛、排便痛などがあります。また、子宮内膜症は不妊にも関与しています。
子宮内膜症の疑いのある方は下記のような症状が見られます。
- 月経痛が年々ひどくなってきた
- 月経のときに飲む鎮痛薬の量がだんだん増えてきた
- 月経時、鎮痛薬を飲んでも痛みがおさまらない
- 月経時、吐き気やめまいがする
- 月経以外のとき、下腹部に鈍痛がある
- セックスのとき奥のほうが痛い
- 排便時、肛門の奥が痛い
- 妊娠を希望して2年経つが、妊娠しない
複数当てはまる方は一度お医者さんに相談してみるのも良いかもしれません。
子宮内膜症の鍼灸治療
子宮内膜症の一般的な治療は、大きく分けて薬物治療と手術があります。症状や重症度、年齢、妊娠の希望など総合的に判断して最適な治療法を選択します。
薬物療法では、鎮痛剤・ホルモン量を調整するピルなどがあります。
手術では、進行度によっては子宮や卵巣など病巣のある器官の摘出や部分切除などで対応します。
鍼灸治療では子宮内膜症そのものの治癒を目指すというよりは、一般治療と併用で子宮内膜症に伴う症状の緩和とともに全身の血流をよくすることで進行を緩やかにもしくは予防する役割を担います。
また、薬の副作用の緩和や手術に伴う症状のケアなどにも鍼灸が効果的です。
子宮内膜症の1番の症状として、『痛み』があげられます。
この子宮内膜症に伴う痛みに関して鍼灸治療が安全かつ効果的であるという報告が多数あります。
人の体には痛みを抑制する機能が備わっており、痛みを抑制する物質βエンドルフィンを体内で放出します。鍼灸で体に刺激を与えるとこの痛みを抑制する物質βアンドルフィンの活性を促進することが分かっています。そのため、鍼灸治療が子宮内膜症に伴う『痛み』に対しても効果的であることが言えます。
ベーシックな治療頻度としては、1週間に1度の鍼灸治療を2ヶ月ほど続けるとお悩みの症状が軽減されることが多いのが、YI’N YANGでの鍼灸治療の傾向です。