妊娠中に逆子と言われ、お医者さんに鍼灸治療にいくように言われたという方がいらっしゃいます。今回は逆子の鍼灸治療についてご紹介します。
逆子の自覚症状
通常逆子の自覚症状というのはなかなかありません。概ね、病院の検診で逆子と診断されてはじめて逆子だとわかります。そのなかでも逆子になった場合に妊婦さんが良く感じるといわれる身体の変化を列挙してみます。
1.トイレが近くなる
通常逆子の場合に骨盤位といわれ、お尻が下向きになるため、赤ちゃんがお母さんの骨盤当たりを蹴ることが多くなります。それにより、通常よりさらにトイレが近くなると言われています。ただ、妊婦さんは通常よりトイレが近くなるため、実際には逆子で近くなっているのかがわかりにくい事が多いです。
2.お腹を優しく触った時に頭の丸い部分が上の方にある
お腹を触ってみて頭の位置を確認するという方法です。強く触れるのは良くありませんが、優しく触れる分には問題ありませんので位置を確認するのは有効です。助産師や逆子治療をしている鍼灸師は触診である程度逆子を見分けます。現代では病院のエコーで逆子とすぐにわかるため触診で分かる必要はあまりありませんが、逆子治療の時には必要な能力になります。触診の経験のない妊婦さんには難しい可能性もありますが胎教のひとつとして楽しみながらお腹に触れるのはとても良い事です。
3.赤ちゃんのしゃっくりの場所
赤ちゃんがしゃっくりし始めたらその場所を確認するチャンスです。しゃっくりの位置でだいたいの位置が分かります。おへそから上にしゃっくりが感じられた場合は逆子の可能性があります。下腹部の方でしゃっくりが感じられた場合は頭位と呼ばれる下向きの状態の事が多いです。赤ちゃんがしゃっくりをしているときに確認してみてください。これは横位と呼ばれる横向きの状態は分かりにくいのでやはり病院でエコーをしてもらうのが一番です。
逆子の時の身体の状態
鍼灸治療から見た場合に逆子の時の身体の状態として多いのは、下半身が冷えている場合です。通常、妊婦さんは身体があつい場合が多く、妊娠した途端に冷え性が治る方もいます。しかし、逆子で鍼灸治療にいらっしゃる方の7割~8割は下半身の冷えがあります。体型的に骨盤が小さかったりすると逆子になりやすいといわれています。
逆子の原因
逆子の原因はよくわかっていません。原因不明であり、逆子になっている事で何らかの疾病が考えられるということもほとんどありません。逆子のまま出産を迎えると難産になるため、現在では出産ギリギリまで待って帝王切開をするのがスタンダードになっています。発生率は、妊娠20週では40~50%、妊娠28週では20~30%、妊娠37週以降では3~5%となっています。
病院での逆子治療
多くは自然矯正されることが多く、現在の帝王切開の精度も非常に高いため、経過観察をしていきます。以前は外回転術という、医師がエコーでチェックしながらお腹を押していくという方法もありましたが、リスクがあるため現在はほとんど行われていません。
逆子の鍼灸治療
鍼灸治療の研究のなかで、逆子に対する鍼灸治療は有効で、かつ安全性が極めて高いとされています。妊娠32週より前から鍼灸治療を行った場合は改善率が約7割、妊娠33週以降の場合は5割ほどに落ちていくため、早い段階での鍼灸治療が逆子には有効であるとされています。
至陰や三陰交といったツボに灸をしていくことが鍼灸治療では多いですが、それに加えて身体全体の状態を見て、お腹の状態や腰の状態を中心に全身状態を整えていくことが逆子の矯正に繋がります。
逆子のセルフケア
逆子で鍼灸治療に来院される多くの方は下半身の冷えがあります。冷えに対する考え方は3つ。
1.保温
読んで字のごとくですが、重ね着や常時靴下をはくなどがこれにあたります。ただし保温は熱を外に逃がさない工夫であり、外からの冷えを防ぐ工夫です。これは体熱がある事が前提になっています。つまり、いくら保温したところで元々冷えている場合にはそれ以上の放熱は防げるが温まる事はあまりありません。保温はとても大事ですが身体に熱量がある事が前提になります。
2.加温
熱を外から加えることです。お風呂に入る、お灸をする、なにかで温めるなどがこれにあたります。加温して保温すればある程度の熱を保つことができますし、定期的に加えていくと底上げはされていく事が多いため有効です。しかし、自分の身体から熱量が生まれているわけではないので、定期的に加え続ける必要があります。
3.産熱
自分の身体から熱を生みだすことですが、これは主として運動で、その補助として胃の状態が挙げられます。ラジオ体操などの簡単な運動をして、自分の身体の中から熱を生みだすことが最も効率的です。また胃が健やかであれば、産熱しやすいです。食べ物はカロリーと表記されますが日本語に訳すと熱量とされます。胃などの消化器系が十分に機能していれば熱量は生み出しやすいといえます。
YI’N YANG(インヤン)の鍼灸治療
YI’N YANGの鍼灸治療は、治療による心地良さを重視しています。近年の研究で、心地よさを伝える神経(LTM-C)は優しく穏やかな鍼灸の皮膚刺激によって最も良く働くことが考えられるようになりました。優しい穏やかな鍼灸によって心地よさを伝える神経が良く働き、オキシトシンやドーパミンと呼ばれるホルモンが放出される可能性があります。このドーパミンは身体機能、運動、学習、感情、意欲、ホルモンの調節など多くの生命活動に関与しており、オキシトシンは幸福感を高めたりストレスの軽減に関与しています。心地よい鍼灸治療は、これらの神経やホルモンが関与して身体の症状を減らしたり取り除いたりします。鍼灸治療の元来もつ痛みの治療効果と、心地よい鍼灸治療による治療効果で鍼灸治療の良さを最大限に引き出します。