ベッドに入ったけど中々眠れない、途中で何度も目が覚めてしまう、早く目が覚めてしまう…そんな経験はないでしょうか?睡眠の不調は日本人の5人に1人が抱えるとても身近な問題です。このような睡眠の問題を睡眠障害(すいみんしょうがい)といいます。
この睡眠障害の中でも最も多いのが不眠症です。
不眠症とは
不眠症をざっくりいうと「眠るための準備はしっかりできているに眠れず、眠れないことによって日中の活動に支障を生じているもの」といえます。
不眠が長引くと、日中の眠気や倦怠感、頭痛などの身体の症状だけでなく、気分が落ち込み意欲が低下するなどの心への影響、さらに肥満や糖尿病、高血圧といった身体疾患を招き、脳卒中や心筋梗塞などの重大な疾患へのきっかけになることもあるのです。
このように、睡眠障害は様々な問題を引き起こしますが、日本人は海外諸国と比べて睡眠障害に対する意識が低いといわれています。
海外のとある研究では、日本人は不眠で医師を受診する割合が最も低く、対処行動では飲酒が最多であったとの報告があります。
飲酒は逆に睡眠の質を落とすだけでなく、アルコール依存のリスクもあり、避けるべき対処行動です。
実は睡眠の問題の多くは睡眠環境の改善やセルフケアでも改善することができます。
そのため、適切な睡眠障害への対処方法を知ることはとても重要です。
そして、鍼灸治療を組み合わせることでさらに良い睡眠を得ることができます。
睡眠とは
人は1日のおよそ3~4分の1を睡眠に費やしています。それだけ私たちにとって睡眠が大切ということです。不眠がなぜ問題になるのかを考えるためには、まずは睡眠の役割を知らなければなりません。
こちらの図は睡眠の構造を簡単に示したものです。
睡眠は、脳を休息させる深い睡眠の「ノンレム睡眠」身体を休息させる浅い睡眠の「レム睡眠」があります。眠るとまずはノンレム睡眠、その後レム睡眠となり、この1サイクルはおよそ90分です。睡眠中はこのサイクルを4回ほど繰り返しています。
人は日中の活動を行うと脳が疲労し、眠気が生じます。また、ホルモンや深部体温は眠気のリズムを作っているため、夜になると眠気がくるのです。これを「サーガディアンリズム」といいます。いわゆる体内時計のことです。
この体内時計が正常に働くことで、正常な睡眠に入ることができます。
睡眠の役割とは
では、この睡眠の役割は何でしょうか?
実は、単に身体を休息させているだけではなく、積極的に整備と修復を行っています。
ひとつは情報の整理です。人は覚醒時には目や耳から膨大な情報が入ります。睡眠はこれらの情報を整理し、必要な情報を記憶、不要な情報を消去しています。
もうひとつは脳の自浄作用によるメンテナンスです。脳は全身の25%のエネルギーをも使うことから、たくさんの老廃物を生成します。睡眠はこの老廃物を除去しています。
このように睡眠は人の身体の働きを保つためにとても大切です。
本コラムでは、鍼灸が効きやすい睡眠障害や簡単に行えるセルフケアなどをシリーズでご紹介します。
著者:松浦 悠人(鍼灸学 博士)