「触れる」ということ〜原始的な行為・隠された欲求〜

こんにちは。

乾燥する季節になり、保湿に保湿に保湿を重ねております。中村です。

前回のコロナ後遺症のおまけコラムで次回はボディタッチをテーマにすると公言しておりましたので、今回はボディタッチ、「触れる」という事について綴っていこうと思います。

この記事を書いた人

中村 中村 (表参道外苑前院)

鍼灸治療で得意な症状

不眠、胃腸の不調、顔面神経麻痺、精神科領域の疾患

目次

まずは 露出した脳「皮膚」について

私たちの身体を構成する全ての細胞は、受精後、外胚葉・中胚葉・内胚葉とよばれる細胞群からつくられます。

その中でも「皮膚」は脳と同じ外胚葉由来です。目・耳・鼻などの感覚器も同じ外胚葉由来で、表皮には目や耳などの感覚器の名残があります。(皮膚は光も感じるんです)

そして五感の中で最も早く発達する感覚が触覚で、体長が2.5㎝に満たない胎児も刺激に対して反応を示すことが分かっていて、皮膚は脳に匹敵する情報処理能力を備えているとも言われています。ひとは触覚だけで顔や身体が表出する感情を理解することもできるようです。(ポジティブな感情もネガティブな感情も…それならポジティブを伝えたい…!!)

一歩踏み込んで皮膚感覚

皮膚感覚には、触覚・痛覚・圧覚・温覚・冷覚の受容器があり、人体最大の器官のため皮膚が脳に与える影響は大きいと考えられます。

この感覚を伝える神経の中に「C線維」というものがあります。

主には温覚や鈍痛を伝える神経ですが、一部のC線維には人に優しく触れられた時にだけ快感として伝わるものがあり(毎秒3~10㎝の速さ、400~800gの圧力で触れる)、さらに秒速5㎝では副交感神経優位・秒速20㎝では交感神経優位になるという報告があるんですね。

気持ちいいという感覚が脳に伝わると、視床下部でオキシトシンが分泌されたり、脳内でセロトニンが活性化するので心の安定にもつながります。また、身体の温かさを感じると島皮質が興奮し、他者に対して温かい気持ちになるという報告もあります。

皮膚は入力と出力の両方を行なっているというのも改めて面白いなと思いました。

刺激を受け(入力)、それを脳に伝え、その影響が全身の臓器に与えられ、またその反応が皮膚にあらわれる(出力)。心地よい刺激を受けると肌の調子が良くなったり、ストレスがかかると肌荒れしたり。興味深い器官ですし、免疫力をあげることにも活用できそうです。

心地よい・気持ち良い刺激 にも色々ありますが、いわゆる強い揉みほぐしなどの強い刺激は脳内麻薬様物質が分泌され、一時的に痛みを抑える効果はあるもののその効果は持続しないと言われています。そして強い刺激が加わると身体に防衛反応として力が入り筋線維が硬くなってしまうんですね。(個人的には強い揉みほぐしをするなら、いっそ鍼治療の方がいいのでは?なんて思ったり…)

日本人にとって「触れる」という行為

そもそも「触れる」という行為は誰に教わるでもなく、生まれながらにして持っている原始的な行為です。

前回のコロナ後遺症のコラムで、海外の研究で触れ合いが減ったことによる不眠について少し書いたのですが、ここから派生して、日本人のコミュニケーションの取り方について調べたり考えたりしてみたんですね。

海外では挨拶としてのハグやキスがあるけれど、日本人はお辞儀がベーシックな挨拶になるのではないでしょうか。一定の距離感が作られるので、海外に比べスキンシップが不足していると言われています。

しかし、私たち日本人も幼少期は抱っこされたりおんぶされたり、ほっぺをぷにぷにされたり、なぜかかぶり付かれたり、当たり前のように触れ合いが多かったと思います。成長するとともに他者に触れる機会が減り、恋人や夫婦、親子だけというように、より限定的になってきてしまったけれど。

さらに現在はSNSが普及したり、コロナも経て面と向かった交流も以前より少なくなってしまったように思います。直接会わなくてもコミュニケーションがとれてしまうからです。

ここで一つ、日本では直接的な触れ合いが少ないからこそ言葉が発達した というものを読んだんですね。日本語には手や触覚に関する漢字が多いことや、生地に触れたときのオノマトペなど、表現する言葉が多いこと(シャリ感とか、日本語豊か!)。日本人は繊細な感覚と、それを表現する言葉を豊富にもっているということに改めて喜びを感じてしまいました。

なんて、つらつらと書いてきて何が言いたいかって。

日本人はスキンシップがただでさえ少ないのに、さらに少なくなってきている。が、しかし、本来「触れる」行為は本能的に欲しているもので、生きていく上で必要な行為なんです!(※これはおまけコラムで書きます)。

「触れる」ということは、同時に「触れられている」ということにもなりますよね。お互いに「触れ合っている」ということです。どんなに高性能なマッサージ機を持っていても、マッサージを受けに行きたくなってしまいます。それは触れ合いを求めているのかもしれません。普段少ないからこそ、疲れた時には特に求めてしまうのかもしれません。触れることについて調べていると、寒いと人肌恋しくなるっていうのも、納得だなぁなんて思いました。(ただそばにいるだけで気持ちが安らぐっていうのもありますけどね。でもそれも一人では、オンラインでは感じることができない「触れ合い」だな、と思います。)

あれ、じゃあ鍼灸…

医師に求めることとして患者アンケートではもっと触れてほしい(話を少し聞いただけで診察が終わりでは嫌だ)という項目が上位にありました。

はい、ここで鍼灸の出番です。

あまり知られていませんが、鍼灸師は、医療概論・公衆衛生学・関係法規・解剖学・生理学・病理学・臨床医学総論・臨床医学各論・リハビリテーション医学・東洋医学概論・経絡経穴概論・東洋医学臨床論・はり理論・きゅう理論などを学びます。(私も学校に入るまでこんなに大変だと思いませんでした…)

患者さんの身体の状態や問診から得られる情報を元に、いろいろな可能性を考えます。必要があれば病院へ行ってもらったり、ドクターと話せる知識がないといけません。

そんな私たち鍼灸師。しっかり身体を触ります。しっかりお話をききます。機械を使った検査や診断ができないので、触診や問診はとても大事になるのです。

私がYI’N YANGでいいなと思うことの中に、接触鍼で鍼数も多いので身体に触れている時間が長い・痛くなくて気持ちいいというのがあります。先にも書いた様に、副交感神経優位の状態を作りやすい治療だなぁと思うのです。

交感神経優位になりがちな現代人、そしてスキンシップの少ない日本人に、鍼灸治療はうってつけなのではないか、と改めて思ったわけです。

てなわけで、身体が疲れた時、心が疲れた時はもちろん、疲れにくくする為に、鍼灸治療オススメです!

是非、触れ合いにいらしてください♪♪

著者:中村

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